地震による家具転倒の危険性
地震による家具転倒の危険性が顕わになったのは、阪神淡路大震災でした。5千人以上の方が犠牲になったこの震災では、建物の倒壊と共に、家具の転倒による圧死がかなりの割合を占めていたことが、調査の結果分かったからです。
とりわけ、寝室におけるたんすなど重量のかさばる家具の転倒による被害が多く出ました。それを踏まえ、以降建設されたマンションや戸建の住宅においては、ビルトインタイプのクローゼットを、最初から備えた仕様に変更が相次ぎました。
また家具の転倒による危険性は直接、下敷きになる危険だけではありません。木造の建物では、床や壁にダメージを与えることにもなり、それが間接的に建物の損壊につながることさえ起こり得ます。
避難経路を確保するための家具の配置
寝ている場所、あるいは普段の居場所から屋外への避難の際に、転倒した家具に進路をふさがれると、住み慣れた自宅であってもパニックが起こります。最悪、家具がドアをふさげば外部に出ることさえ出来なくなり、避難は著しく困難になります。そのため、家具の配置には、避難経路が確保されるように、十分配慮する必要があります。
その際注意すべきことは、単に家具の転倒や移動を防ぐだけではなく、家具に収納してある物が飛び指して散乱する危険性、あるいは天板の上に載せてある物が落下する危険性、家具に付けられているガラス扉のガラスが飛散する危険性など、廊下を歩けなくするようなことがないかなど、多面的な検討を加えておく必要があります。
家具転倒防止 その1:家具を壁・床・天井に固定する
地震で転倒が起きそうな家具は、建物に固定して転倒を防ぎます。ただ、この際に注意すべきことは、転倒防止用の金具の取り付け箇所が、床・壁・天井の下地に合っているかどうかの確認が要ることです。
このことは建物自体の構造が鉄筋コンクリート構造であっても同じです。床・壁・天井がコンクリート造になっていれば、金具はどこに取り付けても問題ないのですが、通常RC造のマンションであっても、間仕切壁は骨組みを組んだ上にボードを貼り付けてあるだけです。
下地のないボードに転倒防止金物をビスで締め付けるだけでは、地震の震動で簡単に抜けてしまい、家具の転倒を防ぐことは出来ませんので、下地の確認は必須です。なければ壁や天井に補強が必要になります。
家具転倒防止 その2:重たい物を下に、軽い物を上に、収納物で家具の重心を下げる
大きな地震はすぐには収まりません。繰り返し強い揺れに見舞われますと、上に重い物を乗せた家具ほど不安定になり、ついには転倒します。振り子の原理を思い起こしていただければ分かりやすいかもしれません。
熊本地震では重い瓦葺きの家が多かったことが、建物倒壊の被害を増大させた一因とも言われています。いわゆる頭でっかちになると、基礎のしっかりした建物でさえ、倒壊を起しやすくなります。
いわんや家具においてはそれ以上に危険が伴います。転倒防止対策は、家具も頭でっかちにしないことです。衣類の一枚一枚は軽くても、畳んで収納すればかなりの重量になります。着物のように重量の大きいものを下にして、たとえばセーターのようなかさばりながらも軽い衣類は上にするなどの工夫が転倒をしにくくさせます。
収納物の落下・飛散防止で安全を守る
巨大地震が起きると、F1グランプリのフォーミュラーカー並みの加速が建物に加わります。この加速が、収納物を飛散させる一因です。このことは備え付けのクローゼットや、造り付けの押入の中に入れてある収納物でも等しく起きる現象です。
物がふすまを突き破って飛び出してきたりします。これを防ぐにはまず、物を詰め込みすぎないことが大事ですが、同時に収納の仕方として、ボックスに小分けをするなど、物が飛散してこないような工夫も効果的です。
ボックスに収納するにしても、家具の転倒防止と原理は同じですから、重いものは下に、軽いものは上にという、頭でっかちの不安定にはしない工夫をここでも取り入れるようにして、飛散を防ぎます。